第6回能ソサエティー東京公演
​能「巴」
20210911___ (表).jpg

令和3年9月11日(土)午後2時半

矢来能楽堂

本公演では、テアトル・ノウを主宰し能の新たな世界を追求しておられる観世流能楽師、味方玄氏による「巴」を上演します。味方氏の解説による鑑賞のポイントを手がかりに初めての方でもわかりやすくご覧いただけるプログラムです。

本公演は収録後、編集画像(英語字幕付)を11月23日午前10時(日本時間)よりオンライン企画で国内外へ向け配信予定です。

Jecfund_logo20180401.jp2
Screen Shot 2021-04-09 at 10.26.44.png

 

 

プログラム

令和3年 9月11日 午後2時半開演

​矢来能楽堂

 

     「巴」への誘い              味方 玄  (観世流シテ方)

 

  囃子を“聴く”        左鴻 泰弘 (森田流笛方)

                成田 奏     (幸流小鼓方)

                 河村   凜太郎 (石井流大鼓方)

 

―――――――― 休憩 (20分)――――――――

 

 能 「巴」

 

       シテ(里女/巴) 味方 玄 

 

        ワキ(旅僧)       御厨 誠吾 

        アイ(所の者)   野村 信朗

 

          笛  左鴻 泰弘      

小鼓  成田 奏 

     大鼓     河村 凜太郎

 

 後見    鵜澤 久  

                                                                                                               鵜澤 光

 

 地謡  山﨑 正道  

   浅見 慈一

       観世 淳夫

       大江 広祐

tomoe1.JPG
tomoe2.JPG
kyogen.JPG
tomoe5.JPG
tomoe7.JPG
tomoe3.JPG
tomoe4.JPG
tomoe6.JPG

京都を拠点にされる観世流シテ方 味方玄師の素晴らしい能『巴』を主体に、ご自身による「巴」の解説と、笛方 左鴻泰弘師、小鼓方 成田奏師、大鼓方 河村凜太郎師の囃子の解説がありました。 味方師の解説は能と「巴」への愛に溢れてとても惹きつけられました。 また囃子方 左鴻師、成田師、河村師(ともに関西が拠点)の出演舞台は関東では拝見する機会が少なくお話も演奏も新鮮に感じました。

「巴」は修羅能と呼ばれる武将の霊が主役の能のジャンルの中で唯一女性が主人公。武将木曽義仲に仕え、武道に長け特に長刀の名手だった巴御前。その巴御前の霊が旅の僧の前に表れ、義仲が深傷を負って自害する際に、女である故に一緒に死ぬことを許されなかった無念を語り、自らの戦いの姿、義仲の最期、義仲との別れを再現して見せます。 味方師の巴御前は、特別にドラマチックではない抑えた所作や謡に、巴の決意や哀愁などが伝わり、ぐいぐいと引き込まれるような磁力を感じる巴御前でした。

通常の「巴」では唐織が用いられ、烏帽子をかぶり武装を表現。装束の色味には若い女性を表す赤が入っています。今回の味方師による特別な演出では、これまでの「巴」になかった狩衣肩上という着付けで、甲冑を表現されていました。装束の色も赤は入らず、青系の色で統一されていました。通常の巴の出立が武装という設定でも女性であることが明らかなのと比べ、今回の味方師の巴では、外見だけでは女性と分からない甲冑の中に女性性が隠されている・・・という装束となっており、象徴的な意味や印象が通常の「巴」の装束と大きく変わっていました。 終盤の巴が武装を解く重要な場面は、通常の「巴」では、長刀を置き、烏帽子を外すことで象徴的に表されますが、今回の舞台では、鎧を脱ぐという表現が具体的な行為として加わり、より視覚的に巴の「武装解除」が表現されました。

「巴」を初めて見る人にとっては、能独特の表現の抽象性はそのままに、より直接的に巴の「武装を解く」行為、巴の変化を理解することができ、能に親しみのある人にとっては、演出に驚き(まさに世阿弥の言う「秘すれば花」でした)想像力が刺激され新たな「巴」像を構築することを促されるような演出でした。

鎧の中から現れる淡く鮮やかな水色の装束。濃青の鎧から水色の女性の出立へ。濃淡のコントラストと青という一貫性。青のグラデーションが巴の変化と一貫性を同時に象徴し見事な演出でした。

通常の「巴」では木曽義仲の形見の小袖を身にまとうことにより普通の女性の姿になりますが、味方師の巴では巴の内側から女性の姿が表われ出るイメージです。 本公演で味方玄師が貴重な試みを初披露くださったことが本当にありがたく思いました。

舞台と客席の距離が近い矢来能楽堂で、観客の意識が味方師の巴に集中し、舞台と客席が一体になる感覚を実感しました。 最後に巴が橋掛りを歩いて行くときのピタッとした静寂、空気感も、舞台との一体感を感じた瞬間で、忘れ難い経験となりました。 とても印象的な舞台でした。(文・能ソサエティージャパン事務局 新宮夕海)

撮影:新宮夕海

写真の複製、転用、転載はお控えください。